待つ

ずっと待っている。でも自分が待っているものはいくら待っても来ないものであるということを知っている。なぜならわたしは別に何も待っていないからだ。何も待っていないというのは語弊があるかもしれない。一応待ってはいる。ただ、待っている「対象」ーーいわば「待たれるもの」がないのである。

テレビ番組、好きな配信者の動画、友人との約束、アイドルグループの公演、そういったもろもろのイベントもわたしに待たれてはいない。もちろん楽しみにはしている。特に友人との約束は、わたしが今生きていることを感じられる数少ない現実のひとつで、わたしがこの生から滑り落ちそうになっているのを食い止めてくれているくさびなのだが、しかし、わたしはそれらを待っているわけではない。

わたしは何も待っていない。その日一日のやることがなくなって、布団に横になる。腰がいたいので仰向けの体勢がつらく、抱き枕を足に挟んで横向きになる。目をつむる。そしてわたしは待つ。何も来ないことはわかっている、だってわたしに待たれているものは何もないのだから。それでもわたしは待つ。ずっと待ち続けている。きっとこれからも気の遠くなるような時間待ち続けている。